イスラエルから学ぶ酪農場が夏場にするべき牛のヒートストレス対策5つ
農業・酪農の従事者にとって、近年の気候変動に対応していくことは大きな課題です。夏の厳しい暑さに対して、農業においても、酪農においても適切な対策を取ることが必要とされます。イスラエルでは酪農産業が非常に盛んで、最新鋭の技術を利用しています。以下では酪農場で牛が夏の暑さを乗り切るための5つのノウハウについて述べています。牛の生産性を高めるためには、牛のストレスを減らすことが必要です。家畜のストレスには様々なものがありますが、暑さは牛にとって大きなストレスとなります。乳牛は特に暑さに弱いため、夏が来ると、乳牛にヒートストレスの危険が出てきます。乳牛にとって理想的な温度は-4℃から21℃で、気温がこの範囲を超えれば乳牛はヒートストレスを受けます。乳牛は発汗や早い呼吸で自身を冷やそうとしますが、湿度のために蒸発冷却が起こりにくくなっている場合にはこれには大きな効果はありません。
乳牛がヒートストレスを受けると産乳量が1日あたり約4リットル減ります。またヒートストレスを受けている乳牛の繁殖能力も落ちます。これらの事は大なり小なり農場の経営に深刻な影響を与えます。しかし、適切な計画を立てれば乳牛へのヒートストレスの危険を最小限に抑えられます。次の5つの手順から、あなたの農場で夏に向けてどう備えるのか要点を述べます。
- 日陰を用意する
夏の間、乳牛は日陰で最も快適に過ごします。牛舎内にも日陰があるでしょう。屋外では木や構造物、可動式ブラインドクロスなどの全てが日陰を作る効果的な選択肢になります。
- 涼しい牛舎を整える
快適な涼しさを得るため牛舎は換気する必要があります。冷たい気候の地域でも、少なくとも牛舎の2方面に取り外し可能なパネルを設置することで自然な換気を可能にします。風の無い日は、充分な風の流れが得られるファンが必要になります。
- ファンやスプリンクラーの設置
あなたの場所の夏がどれほどの暑さなのかによって、ファンとスプリンクラーを組み合わせていく必要があります。蒸し暑い気候では、ファンは空気を送れますがそれだけでは乳牛の体を冷やすことは難しいでしょう。乳牛を涼しくするために水を利用する蒸発冷却システムが数種類あります。スプリンクラーや噴霧器のシステムが最も利用されていて、水の短時間散水に続いてファン送風をすることで濡れた牛体から水を蒸発させて冷やします。いくつかの農場では乳牛に届くまでに空気を冷やす雲霧システムを利用しています。あなたの農場に最適なシステムは、農場規模やあなた自身のメンテナンス技能および牛舎構造によって選択します。
- 給餌と水の調整
夏の間、乳牛の餌と水の調整には普段以上に注意を払う必要があります。乳牛は乾物の採食量が減ります。これはルーメン発酵による発熱を抑えるためです。この採食量減少が乳量が落ちる主な原因です。夏にあなたの農場ですべきことは栄養豊富な給餌に変更する方針を立てることです。あなたはバイパス油脂やバイパス蛋白質の量を増やしたいと特に望むでしょう。更なるステップとして、あなたは給餌時間を朝のより早い時間や夕方のより遅い時間に変更する事ができ、これにより乳牛は気温が低めの時間帯に採食できるようになります。夏の間に特に重要なのが、乳牛がいつでも清潔な水を飲めるようにしておくことです。牛1頭は1日に約95リットルの水を飲むとして検討してください。餌と水の管理を徹底することで、摂食量が減ることを防ぐことが出来ます。
ヒートストレスの兆候を探す
あなたの農場スタッフは牛のヒートストレスの兆候を探しだす訓練を受けておくべきです。兆候には活動量の減少、採食量の減少、日陰に牛が群れ集まることも含みます。また、ヒートストレスを受けている乳牛は口を開けて呼吸したり、よだれを流したりします。極端な状態では、牛が体を震えさせたり、バランスを失ったりしているかも知れません。これらの兆候を理解していることが重要で、このような事に気付ければ、牛を冷やす算段をとれるようになります。
イスラエル デイリースクールでは牛のヒートストレス対策を万全にすることにより、全ての農場が無事に夏を乗り切ることを願っています。イスラエルの酪農産業のノウハウがお役に立てば幸いです。











